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Service遺産分割

参考:遺産分割手続き

遺産の分割の方法

  1. 遺産分割の手続き

    遺産分割の手続きには次の4つがあります。

    (1)遺言による指定分割
    (2)協議による分割
    (3)調停による分割
    (4)審判による分割

    • (1)遺言による指定分割
      被相続人は,遺言で,分割の方法を定めたり,分割の方法を第三者に委託することができます(民法908条)。分割の方法を定めるとは,例えば「妻には○○所在の宅地を,長男には株式を,長女には○○銀行○○支店の預金を相続させる」というように,各相続人の取得すべき遺産を具体的に定めることをいいます。(→詳しくは遺言がある場合を参照) このような遺言による分割の方法が定められている場合には,原則として相続人は単独で不動産の登記申請などを行うことができます。
    • (2)協議による分割(協議分割)
      共同相続人全員の合意により遺産を分割する場合です。共同相続人全員の合意によるので,全員が納得する限り分割の仕方は話し合いで自由に決めることができます。一方誰か一人でも合意しない場合には協議分割は成立しません。また,中立的な第三者が間に入らないので,感情的な対立から協議がまとまらないといった事態になる場合もあり得ます。
    • (3)調停による分割(調停分割)
      (2)の分割協議がまとまらないときや協議ができない場合は,各共同相続人は家庭裁判所の調停手続を利用して遺産分割を請求することができます。 調停分割も,その本質は(2)の協議分割と同じく話合いによる遺産分割なので,自由に分割内容を決めることができる点,話合いによる共同相続人全員の合意がなければ成立しない点は(2)の協議分割と同様です。しかし調停委員又は家事審判官(裁判官)が間に入るので,共同相続人だけでは感情的になってしまい話合いができないような場合にも冷静に話し合いの場を設けることができる点や,合意が成立した場合作成される調停調書には確定審判と同一の効力があり,その調停調書を債務名義として強制執行ができる点などが,(2)の分割協議との違いです。(→詳しくは遺産分割調停・審判・訴訟を参照)
    • (4)審判による分割(審判分割)
      (3)の遺産分割調停が不成立となった場合,家庭裁判所の審判官が,民法906条の分割基準に従って,遺産分割の仕方を定め,分割を実行する手続です。 話合いでまとまらない場合であっても裁判所によって遺産分割の仕方を決めてもらえます。そして審判書を債務名義として強制執行ができる点などがメリットになります。その反面,審判官によって法律に従った分割がなされるので,(2)協議分割や(3)調停分割のように自由な分割内容を決めることはできない点がデメリットといえます。(→詳しくは遺産分割調停・審判・訴訟を参照)
  2. 遺産分割の方法

    遺産分割の方法には,主に次の3つがあります。

    • (1)現物分割(現物を共同相続人に単独または共有名義でそれぞれに分配する方法)
    • (2)換価分割(遺産を競売あるいは換価人によって換価をし,その代金を共同相続人に分配する方法)(家審規107)
    • (3)代償分割(相続人の一人または数人に現物を取得させ,その代償として現物を取得する相続人に他の相続人に対して自己の相続分を超える分について債務を負担させる方法)(家審規109)

    協議分割,調停分割の場合には,当事者が合意する限り,(1)~(3)のどの方法によるかは自由です。また(3)代償分割を選んだときの金銭債務の履行に代えて,相続人の固有財産の給付をすることもできます。

    もっとも審判分割の場合は原則として(1)現物分割を行い,現物分割ができない場合は(2)換価分割による方法が取られます。(3)代償分割がなされるのは,相続財産が細分化を不適当とするものであり,共同相続人間に代償金支払いの方法によることにつき争いが無く,当該相続財産の評価額がおおむね共同相続人間で一致しており,しかも相続財産を取得する相続人に債務の支払い能力がある場合に限られます(大阪高決昭和54年3月8日)

遺産分割協議書の作成

  1. 平成21年12月2日死亡した被相続人甲野一郎(以下「甲野一郎」という。)の相続財産について,甲野一郎の妻である共同相続人甲野春子(以下「甲野春子」という。),甲野一郎の長男である共同相続人甲野二郎(以下「甲野二郎」という。),甲野一郎の長女である甲野夏子(以下「甲野夏子」という。)との間で遺産分割協議を行い,本書のとおり合意したため,本書を4通作成し,各々署名押印し,各々その1通を所持することとする。 被相続人の遺産を次のとおり分割することに同意する。
  2. 相続人甲野春子は次の遺産を取得する。

    • (1)東京都○○区○○一丁目○番地所在 宅地○○平方メートル※1
    • (2)右同書同番地所在 家屋番号○○番 木造瓦葺平屋建居宅一棟
      建坪○○平方メートル
  3. 相続人甲野二郎は次の遺産を取得する。

    • (1)銀行預金 ○○銀行○○支店の被相続人名義の定期預金○口 額面○○万円※2
    • (2)株式会社●●建設 株式  3万株
    • (3)株式会社●●ゴルフ倶楽部 △△カントリー倶楽部 第●号のゴルフ会員権
  4. 相続人甲野夏子は次の遺産を取得する。

    • (1)長野県○○市○○町○丁目○番地所在 山林○○平方メートル
    • (2)第2項ないし第4項に記載する以外の現金その他の遺産※3
  5. 相続人甲野春子,同甲野二郎,同甲野夏子は500万円の負債があることを確認し,その負債の返済を××銀行××支店の被相続人名義の普通預金から支払うことを確認する。※4

  6. 相続人甲野春子,同甲野二郎,同甲野夏子は,甲野家の祖先の祭祀を主催する者を甲野二郎と定める。甲野家の系譜,祭具及び墓の所有権並びに墓地の使用権は,甲野二郎が取得する。※5

  7. 相続人甲野春子,同甲野二郎,同甲野夏子は,本書に記載した各相続人の遺産の取得の実行行為及びその手続を弁護士●●●●に委任する。※6

    平成22年1月28日
    上記相続人  甲 野 春 子  印※7
    同         甲 野 二 郎  印
    同         甲 野 夏 子  印

※1 各共同相続人の取得する遺産が特定されていることが必要です。 いわゆる住所ではなく,地番を記載する必要があります。登記簿謄本等を参考にして正確に記載する必要があります。

※2 利息がある場合もあるので,必ずしも額面○○円と特定しない方法もあります。

※3 本文例では,その他の財産は全て甲野夏子が取得するという形で,遺産が新たに見つかった場合でも甲野夏子が取得するということになります。しかし,多額の遺産が見つかる可能性なども考えて,本文例のような形をとらず,「本遺産分割協議書作成後新たに遺産が発見された場合は,共同相続人は再度遺産分割協議をする」旨の条項を入れる方法もあります。

※4 本来債権者に対しては,債権者の同意がない限り相続人はそれぞれ法定相続分どおりの債務を負担することになります。しかし,相続財産の中から負債を先に支払ってしまうことにすれば,誰が将来どのような負債を負担するかということを考えなくてもよくなります。このような負債の支払についても,手続の実行者として弁護士に依頼しておくと,円滑に手続を進めることができます。

※5 祭祀の承継についても,遺産分割協議の中で決めておくと紛争の予防になります。

※6 遺産分割協議が成立しても,実際にその内容を実現することは複雑な手続もあり容易ではありません。遺産分割の実行を法的手続に明るい専門家に依頼すると遺産分割の実行もスムーズですので,検討されるとよいと思います。

※7 共同相続人全員の署名・押印が必要です。
(登記申請等との関係では実印でするべきです。)

遺産分割調停・審判

  1. 遺産分割とは、被相続人が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の相続財産の権利者を確定する手続きです。遺産分割の手続きとしては、遺言による遺産分割とそれ以外の遺産分割に分かれます。遺言以外の遺産分割の手続きとしては、協議による遺産分割、調停による遺産分割、審判による遺産分割があります。
  2. 遺言による分割

    被相続人は、遺言で、分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託することができます(民908)。 「分割の方法を定める」とは、例えば、「妻には居住家屋を、長男には田畑を、長女には山林を相続させる」というように、分割の具体的な方法、すなわち、各相続人の取得すべき遺産を具体的に定めることです。このような遺言が残されたときは、遺言執行者(民1006~1021)の行為により分割が実行されます。「分割の方法を定める」遺言は、同時に相続分を定める遺言(たとえば妻3分の2の財産を相続させるという遺言のこと)といえますが、遺留分を害する指定をしても遺言自体は無効とはなりません。遺留分減殺請求の対象になるにすぎません。

  3. 協議による分割

    共同相続人全員の合意により遺産を分割する手続です。共同相続人は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合(民908)を除き、いつでもその協議で遺産の分割をすることができます(民法907I)。被相続人が遺言で遺産分割を禁じているようなケース以外では遺言があっても、協議によって遺産分割を行う場合があるということです。遺言が相続人間の紛争を巻き起こす場合もありますので、遺言が存在する場合、遺言で分割を行うのか、協議で行うのかを慎重に検討する必要があります。

    協議の成立には、共同相続人全員の意思の合致が必要です。

    全員の意思の合致がある限り、分割の内容は共同相続人の自由に定めることができます。また、分割の態様についても、現物分割、換価分割、代償分割等、自由な方法が採れます。

  4. 調停による分割

    分割協議がまとまらないときや協議ができないときは、各共同相続人は家庭裁判所に分割を請求できます(民907Ⅱ)。分割の申立ては調停手続の申立てによってなされます。いきなり遺産分割の審判の申立てもできますが、遺産分割の審判申立てがあっても、まず調停手続に付し、話し合いによる解決を試みるのが一般的です。

    調停分割は、調停委員又は家事審判官(=裁判官)が話し合いの仲立ちをしてくれること、及び合意が成立した場合作成される調停調書の記載には確定した審判と同一の効力(強制執行ができる)があること(家審21I・15)が特徴です。遺産分割調停は、①誰が(相続人の確定)、②何を(遺産の範囲の確定)、③どのような割合で(法定相続分を特別受益、寄与分で修正して算出した具体的相続分)、④どのように分けるか(分割方法)という手順で進行することに一般的にはなっています。

  5. 審判分割

    遺産分割調停が不成立となった場合、審判手続に移行します(家審26、家審規20・138の2)。審判分割においては、家庭裁判所の審判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して(民法906条)、各相続人の相続分に反しないよう分割します。

    また、特別の事情がある場合には、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、分割を禁止することができます(民907Ⅲ)。金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他給付を命ずる審判は、相手が任意に履行しない場合、これに基づいて強制執行ができます(家審15)。

  6. 調停の具体的手続きは以下のとおりです。

    • (1)調停機関
      調停は、家事審判官及び調停委員をもって組織する家事調停委員会が行います(家審3Ⅱ本文)。
      実務上は、弁護士その他の専門家を含む2名の調停委員により、事件の実情の聴取、調停の勧告が行われます。
    • (2)調停手続
      •  事前調査

        申立をすると裁判所から申立人および相手方に実情の照会が書面や電話でなされる場合があります。

      • 調停期日の指定・通知

        調査が終わると調停期日が指定され関係者に通知されます。

    • (3)調停の進め方
      •  調停委員からまず調停の進め方についてレクチャーがあります。

      •  その後、以下の内容について調停で話合いがなされます。

      •  相続人の範囲の確定

      •  相続分の確定

      •  遺産の範囲の確定

      •  遺産の評価

      •  特別受益

      •  寄与分

      •  具体的相続分

      •  遺産分割方法の確定

    • (4)注意点
      当事者から意見を聴取する事実の調査がなされますから、当事者は、各種書類、陳述書等できるかぎりの資料を提出すべきです。
      調停による遺産分割は、一種の協議による分割ですから、分割の基準及び方法に原則はありません。
      当事者間の話し合いによる解決を助けるという立場に調停委員会は立ちますが、調停案を調停委員会が出す場合もあります。
    • (5)調停手続の終結
      • 調停の成立

        調停において当事者間に合意が成立すると調停調書に記載され調停は成立する(家審21)。

      • 調停が成立すると、確定した審判と同一の効力を有します(家審21)。

      • 調停不調

        当事者間で合意成立の見込みがないと調停委員会が判断すると調停は不成立となり審判に移行します。

登記・登録その他の名義変更

  1. 不動産の登記手続

    • (1)遺産分割前に共同相続登記がなされている場合,遺産分割協議等で特定不動産を相続することに決まった相続人は,登記権利者となり,その他の登記された共同相続人は,登記義務者となります。両者が共同して共同持分移転の登記申請をすることになります。
      (必要書類)
      • ア.登記移転原因証明情報
        遺産分割協議書,調停調書正本または審判書正本など
      • イ.住所証明情報(登記権利者の住民票)
      • ウ.固定資産評価証明書
      • エ.委任状
      • オ.登記済証(共同相続の登記を受けたときのもの。オンライン指定庁で所有権の登記を受けているときは,登記識別情報)
      • カ.印鑑証明書(登記義務者の印鑑証明書)
    • (2)遺産分割前に共同相続登記がなされておらず,被相続人の登記のままである場合,遺産分割協議等で特定の不動産を取得した特定相続人が単独で相続を原因とする移転登記をすることができます。
      (必要書類)
      • ア.登記移転原因証明情報
        (ア)遺産分割協議書,調停調書正本または審判書正本など
        (イ)被相続人の出生から死亡までの戸(除)籍謄本,改製原戸籍謄本
        (ウ)相続人全員の戸籍謄(抄)本
        (エ)相続放棄の申述受理証明書,相続欠格証明書,相続分のないことの証明書(特別受益証明書
        (オ)遺産分割協議者の印鑑証明書
      • イ.住所証明情報(登記申請人の住民票)
      • ウ.固定資産評価証明書
      • エ.委任状
  2. 自動車の登録手続

    自動車には登録手続があります。自動車の種類によって,権利移転手続が違うので,国土交通省各地方運輸(支)局に問い合わせて確認することが必要です。軽自動車,二輪バイクなどは,大きさにより権利移転手続の場所が異なります。陸運支局であったり,軽自動車検査協会であったり,市役所であったりするので注意が必要です。 登録制度が適用される自動車などは登録なしに運行の用に供することはできませんし,所有権の取得を第三者に対抗することもできません。
    (必要書類)
    • ア.名義変更の原因となった相続が生じたことを証する書面(被相続人の戸(除)籍謄本)
    • イ.相続人の範囲の証明書(相続人全員の戸籍謄本)
    • ウ.特定相続人が当該自動車を取得することになったことについての証明書(遺言書・遺産分割協議書(相続人全員の印鑑登録証明書)・同調停調書謄正本・同審判書正本など)
    • エ.申請書(申請人の印鑑登録証明書添付)
      用紙は当該自動車を使用する場所を管轄する各地方運輸(支)局または自動車検査登録事務所で定められたものがあります。
    • オ.手数料納付書
    • カ.自動車検査証
    • キ.車庫証明書
    • ク.自動車税納付済証
  3. 預貯金債権の名義書換又は払戻し

    法律上は,預貯金債権は,相続開始と同時に,法定相続分に応じて分割され各相続人に移転します(最判昭和29年4月8日)。また,特定遺贈がされた場合,預貯金債権は,相続開始時から受遺者に移転します。
    • (1)遺言執行者がいる場合
      相続人は名義書き換えなどの手続ができません。
    • (2)遺言執行者がいない場合
      相続人が名義書き換えなどの手続を行います。 もっとも金融機関は相続人間の争いに巻き込まれるのを避けるため,上記判例に従った形での運用を必ずしもしていません。各金融機関ごとに手続や様式が多少違うので,確認することが必要です。
      (必要書類)
      • ア.遺産分割協議をした場合

        (ア)遺産分割協議書(印鑑登録証明書も含む)
        (イ)被相続人の出生から死亡までの戸(除)籍謄本
        (ウ)各相続人の戸籍謄本
        (エ)当該金融機関の払戻ないし名義書換請求書
        (この場合も相続人全員の署名捺印(実印)及び印鑑登録証明書が必要となることがありますので事前確認をすべきです)
      • イ.遺産分割調停・遺産分割審判をした場合

        (ア)遺産分割調停調書正本または遺産分割審判書正本(審判書には確定証明書も必要です。)
        (イ)相続人の戸籍謄本
        (ウ)当該金融機関の払戻ないし名義書換請求書
  4. 株式の名義書換

    株式の名義書換についてはまず株券があるかないかを確認します。

    • (1)株券がある場合
      (必要書類)
      • ア.遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑登録証明書または遺産分割調停調書正本,遺産分割審判書正本
      • イ.被相続人の戸(除)籍謄本
      • ウ.相続人全員の戸籍謄本
      • エ.名義書換請求書
      • オ.株券が発行されている会社の株券
    • (2)株券がない場合
      • ア.株券不所持制度利用の場合

        株券の発行を受けて株券がある場合と同様の手続をとることもできますし,発行を受けないで名義書換を請求することもできます。

      • イ.株券を証券会社等に預けている場合

        株券の出庫を請求して株券がある場合と同様の手続をとることもできますし,出庫を請求せずに証券会社等に名義書換の代行を請求することもできます。

    • (3)株券喪失の場合
      株券喪失登録(会社221)を経て株券再発行を求め,名義書換請求をすることになります。
    • (4)上場会社の場合
      上場会社の場合は,名義書換代理人がいるので,名義書き換え代理人である信託銀行か証券代行会社に名義書換請求をします。 なお,平成21年1月5日から上場会社については株式の電子化が実施されているので,名義書換には株券の呈示は不要です。
      (必要書類)
      • ア.遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑登録証明書または遺産分割調停調書正本,遺産分割審判書正本
      • イ.被相続人の戸(除)籍謄本
      • ウ.相続人全員の戸籍謄本
      • エ.名義書換請求書

        ※各手続きごとにこれ以外に必要となる書類がありますので確認が必要です。

  5. ゴルフ会員権の名義書換

    どのような手続で相続ができるのか,そもそも相続ができないのか,などについて会則・運営規則で定まっていることが多く,ゴルフクラブごとに取り扱いがかなり異なっているので,最新の会則・運営規則を取り寄せて手続について調べることをお勧めします。会則・運営規則に記載がない場合でも,会員権の相続について取り扱いが決まっていることも多いので電話や書面でゴルフクラブに問い合わせるのも有効です。

    (必要書類)(参考例)

    • ア.遺言書,遺産分割協議書,遺産分割調停調書正本または遺産分割審判書正本
    • イ.被相続人の出生から死亡までの戸(除)籍謄本
    • ウ.預託金証書
    • エ.名義変更申請書
    • オ.入会申込書
    • カ.受遺者または当該ゴルフ会員権を取得する相続人の住民票及び印鑑登録証明書
    • ※遺産分割協議書による場合は,以上に加えて
      キ.相続人の範囲を確定させるため相続人全員の戸籍謄本

遺言がある場合

    遺言の内容によってその後の手続きが以下のように異なります。 なお自筆証書遺言は,家庭裁判所での検認という手続がまず必要です。

  1. 遺産の分割方法の指定

    (1) 「●●所在の土地は二男××が取得し,△△所在の土地は長女××が取得する。」との遺言がある場合が典型例です。この場合,対象となる財産や分割方法が明確なので,基本的に相続人は特に遺産分割協議等をしなくても,これによって登記をすることが可能です。

    (2) 「○○所在の土地は長男××に相続させる」といった遺言も,基本的には遺産分割方法の指定と解されています。この場合も原則として遺産分割協議等をしなくても,相続人は不動産の登記申請などを行うことができます。また預貯金の場合も,遺産分割方法の指定の遺言がある場合には,基本的には単独で銀行に払戻しを請求できます。しかし,金融機関によっては他にも書類等が必要となる場合がありますので,確認が必要です。

    (3) 「○○所在の土地は面積等分にてこれを二分し,長男××(昭和○年○月○日生)及び三男××(昭和○年○月○日生)が各々その1を取得する。」との遺言も遺産分割方法の指定です。しかし,この場合面積等分といっても,どのような境界線で二分するかについては明らかになっておらず,遺産分割協議等を経る必要があります。


  2. 相続分の指定

    例えば,「夫の相続分を7分の4,長女の相続分を7分の2,二女の相続分を7分の1とする」といったように,法定相続分と異なる相続分が指定される場合があります。この場合,遺言で指定された相続分に従って遺産分割協議などが行われることになります。

  3. 認知

    遺言執行者が認知の届出をし(戸籍法64),そのうえで認知を受けた者を加えて遺産分割協議をなす必要があります。遺言執行者が指定されていない場合は,相続人や受贈者らは,遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して,遺言者選任の申立をすることになります。遺産分割協議成立後に認知の遺言が発見された場合には,説が分かれていますが,民法910条を類推して,被認知者は,遺産分割の無効や再分割を主張することはできず,他の共同相続人に対して価格賠償を請求できるにすぎないということになります。

  4. 廃除

    「○○を廃除する。」との遺言があっても,それだけでは廃除の効力は生じません。廃除の審判を経て廃除が認められた場合に遡って廃除の効力が生じることになります(民893)。つまり,廃除の遺言がある場合に,廃除の審判をせずに廃除の対象者を遺産分割協議から外してなされた遺産分割協議は無効となる可能性があります。また逆にその人を加えて遺産分割協議を成立させても,後日廃除の審判が確定すれば,その遺産分割は無効となってしまいます。したがって,廃除に関する審判をまず確定させてから,遺産分割協議を行うべきです。これも遺言執行者によっておこなわれる必要があることから,遺言執行者が指定されていない場合は,相続人や受贈者らは,遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して,遺言者選任の申立をすることになります。

  5. 遺贈

    (1)包括遺贈

    ア.全部包括遺贈 遺産を一人に全部遺贈するとの包括遺贈の場合には,遺産分割協議をしなくても,受遺者が全遺産を取得します。

    イ.割合的包括遺贈 甲に全遺産の7分の4を,乙に7分の2を,丙に7分の1をそれぞれ遺贈するという内容の遺言があった場合,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990)から,相続人以外の包括受遺者を含めて遺産分割協議をしなければなりません。

    (2)特定遺贈

    遺産中の指定された特定財産の無償譲与をいいます。例えば「甲不動産を甲に遺贈する。」との遺言がある場合です。 この場合,遺言の効力発生と同時に,受遺者がその財産を取得することになります。よって,その財産は遺産分割の対象財産からは除かれ,残りの遺産について遺産分割協議をすることになります。

相続と税金

  1. 相続税計算の流れ
    【説例】夫が死亡し、妻と長男・長女が3億円の正味遺産を法定相続分の割合で相続した場合

    相続税計算の流れ
    ※クリックして拡大


    「小規模宅地等につての相続税の課税価格の計算の特例」とは?

    居住者や事業のために使用している場合の宅地の財産評価は、相続人や
    その親族の生活基盤維持などを考慮して土地評価額からの減額規定が
    設けられています。これを「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」といいます。


    平成22年4月に、大幅な改正がありました。
    詳細は下記をご覧ください。
    http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm


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